「田舎に帰りたい」のは夫のホンネだろう。「イヤ」と答えるのも妻のホンネである。ホンネを語るとは、互いにわがままになることだ。夫が定年を迎える頃には妻も五十代、六十代になっている。そろそろわがままになってもいい頃だ。定年後の生活設計は、夫婦が互いにわがままを言い合うところから始まる。夫婦ともに、このことをまず覚悟しておくほうがいい。満ち足りた老後を迎えるためには、互いのホンネを理解し、尊重し合うことが必要だ。
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そのために大切なことは、矛盾するようだが、夫婦がそれぞれ自分だけの将来を考えることである。自分のなかにあるホンネを抑えつけながら「夫婦二人の理想の未来」を考えたところで、現実は理想どおりに運ぶわけではない。そもそも相手のホンネが見えないのでは、理想の描きようがない。ところが悲しいかな、多くの夫たちは「夫婦の老後」ばかり考える。定年後は夫婦で海外旅行を楽しもう。夫婦でダンス教室にでも通ってみるか。これまで苦労をかけた分、妻には楽をさせてやろう……。妻たちはまず、そんなことは考えていない。ほとんどの妻が考えているのは、夫が寝たきりや認知症になったとき介護をどうするか、そして夫の死後、残された自分が一人でどうやって暮らしていくかである。私は、妻たちのほうがはるかに現実的だし、よほど賢明であるように思う。